年俸制ってなに?月給制との違いやメリット・注意点をまとめて解説
転職活動をしている際に、「年俸制」の求人を目にすることがありますが、その採用は月給制に比べて少ない傾向にあります。年俸制に慣れていない人も多いでしょう。
この記事では、年俸制とはどのような賃金制度なのか、そして月給制との主な違いについて詳しく解説します。年俸制では、年間の給与が月々同額で支給される点が特徴ですが、それに伴うメリットや注意点も含めて紹介します。
年俸制を選ぶ時のポイントや、個人にとっての適切な選択肢についても具体的にお伝えします。
1.年俸制って何?
年俸制とは、労働時間に依存せず、労働者の成果に基づいて給与額が決まる賃金制度です。
年俸の金額(年俸額)は、企業と従業員が1年間の給与について決定は合意後に行われます。
この年俸額は、労働基準法によって月に1回以上の支払いが義務付けられているため、毎月コンスタントに分割して支給されます。単に年俸制であるからといって、給与が年に1回まとめて支払われるわけではありません。
将来的に、年俸制がどのような賃金体系であるか、さらに詳しく掘り下げて説明していきましょう。
企業が年俸制を取り入れるワケ
1.業績の明確な評価
年俸制は労働者の成果に基づいて給与を決定するため、業績評価が明確になります。業績が良好な場合には適正な報酬を得ることができる仕組みです。
2.業績に応じた賃金分配
企業は業績に応じて賃金を分配することが可能です。労働者が企業の成長や利益に貢献した場合、それに見合った形で報酬を受け取ることができます。
3.実力主義の推進
年俸制は実力主義に基づく賃金制度です。成果が評価され、それに応じた報酬が与えられるため、能力や成果に応じた適正な評価が期待できます。
継続して勤務している場合は、前年度の業績や成果を基にして、翌年分の年俸も決まります。
このため、労働者は自身の成果に責任を持ちながら働くことが求められ、企業側も成果に見合った報酬を提供することでモチベーションを維持します。
月給・日給と年俸制って何が違う?
年俸制
- 支給単位: 年単位で支給される給与制度。
- 支給タイミング: 年俸額を月割りして毎月支給されるが、年に1回限りの支給ではない。
- 給与の安定性: 月ごとの給与額は事前に確定しており、安定している。
- 変動要因: 残業や各種手当の影響を受けず、基本的に毎月同じ額を受け取る。
月給制
- 支給単位: 月単位で支給される給与制度。
- 支給タイミング: 毎月定期的に支給される。
- 給与の安定性: 残業や手当などの影響で毎月の給与額が変動することがある。
- 変動要因: 労働時間や業績に応じて給与額が変動する可能性がある。
日給制
- 支給単位: 1日単位で支給される給与制度。
- 支給タイミング: 出勤した日数に応じて支給される。
- 給与の安定性: 勤務日数によって毎月の給与額が異なるため、不安定。
- 変動要因: 出勤日数に応じて給与額が変動する。
これらの制度の違いから、年俸制は1年間の給与が前もって決まっており、月給制と日給制はそれぞれ毎月や日ごとに支給額が変わる点がそれぞれです。
年俸額ってどう決まるの?
前年度の成果を基にするケース
多くの企業では、前年度の業績や成果を基に年俸額を決定します。この場合、成果や業績が評価の基準となります。
賃金規定による計算方法や評価基準の定め
一部の企業では、賃金規定や評価基準があらかじめ定められており、これに基づいて年俸額が算出されます。例えば、業績目標の達成度や職務の重要度などが考慮されることがあります。
契約更新時の金額提示と合意
契約更新の際には、企業側が年俸額を提示し、労働者と合意を目指すケースもあります。この場合、労働者は提示された年俸額を検討し、合意した上で契約を更新します。
労使の合意における重要性と留意すべき点
年俸制では、企業と労働者の合意が基本ですが、時には企業側の一存で金額が決まる場合があります。労働者側は、この点に注意し、評価基準や不服申し立ての手続き方法が契約書や就業規則にどう規定されているかを確認する必要があります。
これらの要素を考慮して、年俸制の企業への転職を検討する際には、契約内容を詳細に確認することが重要です。
ボーナスや残業代はどう扱われるの?
残業代の扱い
年俸制でも法定労働時間を超える残業に対しては残業代が支給されることが原則です。具体的には以下のようなケースがあります。
みなし残業代制度の適用
企業がみなし残業代制度を採用している場合、一定の時間を超えての残業を予め年俸に含めて支給する場合があります。これにより、定められた時間内の残業については別途残業代が支給されないことがあります。
管理監督者や裁量労働制の適用
これらの立場にある従業員は、一般的な労働時間法の適用範囲外になることがあり、年俸に残業代が含まれない場合があります。ただし、具体的な労働条件や法的要件に応じて判断されます。
賞与・ボーナスの扱い
賞与やボーナスの扱いは企業ごとに異なりますが、年俸制での一般的な取り扱いは以下の通りです。
年俸に賞与を含める場合
企業が年俸に賞与を含めて支給する場合があります。この場合、賞与は年間を通じて均等に分割して毎月支給されることがあります。
別途賞与の支給
年俸に賞与を含めない場合、別途賞与が設定され、特定の時期に支給されることがあります。これは、企業の業績や契約条件に基づいて支給されることが一般的です。
これらのポイントを踏まえて、年俸制における労働条件や給与の詳細を把握し、自身の労働契約に関する理解を深めることが重要です。
企業の就業規則や雇用契約書を注意深く確認することで、給与や労働条件に関する不明点を解消することができます。
2.年俸制のメリットは?
- ・収入の見通しが付くため長期計画が立てやすい
- 年俸制では、年間の給与額があらかじめ決まっており、毎月の収入が安定しています。これにより、将来の収入の見通しがつきやすく、長期的な計画を立てやすい点がメリットです。
- ・成果次第で大幅な収入アップが狙える
- 年俸制では、成果や業績に応じて給与額が決まるため、優れた成果を上げることで大幅な収入増が期待できます。これは完全成果主義に近いシステムであり、実力を発揮しやすい環境を提供します。
年俸制の会社での転職を検討されている場合は、これらのポイントを考慮して自分に合った賃金制度かどうかをしっかり確認することが重要ですね。
ライフプランが立てやすい
年俸制では、年初に自分の年収を確認することができます。このため、月給制よりも収入の見通しが立ちやすく、業績の悪化などによる給与の減額の心配がありません。
安定した収入が確保できることが分かれば、ローンの返済や旅行、大きな買い物など、長期的な財務計画を立てやすくなります。結婚や子育てなど、プライベートのライフプランもより考えやすくなるでしょう。
結果によっては大きな収入増加も見込める
成果主義に基づく年俸制度では、実績に応じて収入が大幅に増える可能性があります。
企業が成果を評価して年俸を決定するため、頑張り次第で収入が飛躍的に向上することがあります。
年収が上がりにくい若手社員であっても、実力さえあれば高額な給与を得ることができるのです。
成果に応じた給与制度は、給与の安定性を保ちつつ、モチベーションを高め、年俸額の増額を促進します。
モチベーションが向上することで、さらなる収入アップの機会も広がるでしょう。
3.年俸制のデメリットは?
・成果次第で収入が減少する可能性があること
・成果が即座に給与に反映されないこと
これらは一定のリスクが伴う働き方であり、デメリットを考慮したうえで年俸制度を選択する必要があります。
成果次第で収入が変動する年俸制度のデメリット
年俸制度では、業績や成果によって直接給与額が影響されるため、業績が振るわない場合は収入が減少することがあります。この仕組みは一部の人にとってプレッシャーとなり、実力を発揮できない恐れもあります。そのため、プレッシャーに強く、長期間にわたって頑張り続けられるメンタルが必要です。
ただし、労働基準法には減給の限度が設けられており、成果が振るわなかったからといって、会社が適当に給与を減額することはできません。これにより、安心して成果に取り組むことができる法的な保護があります。
成果主義の下で働くことのリスクとメリットをよく考えたうえで、自分に合った働き方を選択することが重要です。
成果の反映に時間がかかる年俸制度のデメリット
年俸制度では、年に1度の決算時に基づいて年俸額が決定されます。
そのため、いつ大きな成果を上げても、その成果が給与に反映されるのは翌年度となります。
一方、月給制度では昇給のタイミングが年に2回程度あり、成果が比較的早く給与に反映されることが多いです。
現在の収入が不安定であったり、生活が苦しい場合、成果が還元されるまでの時間が長いという点がデメリットとして感じられるかもしれません。
このような場合、自身の生活や経済的な状況に合った給与制度を選ぶことが重要です。
4.年俸制で働く際の注意点
年俸制度には、いくつかの注意すべきポイントがあります。
まず、労働者の無知を悪用して、一方的な労働力の搾取を行う会社が存在することがあります。
そのため、入社前に会社の背景や評判をよく調べ、信頼できる企業かどうかを確認することが重要です。
また、年俸制度では成果が直接給与に反映されるため、業績不振や予期せぬ給与の減少に備える必要があります。これにより、経済的な安定を確保するための備えや、給与の条件や詳細を明確にすることが大切です。
さらに、契約時には労働条件や福利厚生、労働時間など、細かい点にも注意を払う必要があります。契約書をしっかりと確認し、不明な点や疑問点があれば遠慮せずに質問することが推奨されます。
年俸制度は柔軟性や成果主義を重視する一方で、労働者にとってリスクを伴う場合もあります。自身のキャリアやライフスタイルに合った働き方を見極めるためにも、入念な検討が必要です。
みなし残業代制度と年俸制のポイント
年俸制度を採用する企業でみなし残業代制度が適用される場合、規定時間内の残業代は年俸に含まれていますが、規定を超える残業には別途残業代が支払われます。
さらに、休日労働や深夜労働があった場合には割増賃金が適用され、それに応じて残業代が計算されます。
みなし残業時間には上限があり、通常では1ヶ月に45時間、年間で360時間が限度とされています。企業がみなし残業代制度を導入している場合、雇用契約書には年俸とみなし残業時間が別途明記されていますので、入社前に確認が必要です。
特にみなし残業時間が45時間を超える場合は、労働条件や生活スタイルにどう影響するかをよく考えることが重要です。適切な情報収集と確認を行い、自分に合った働き方を選ぶための基準としましょう。
年俸制度の受け取り方法と税金の支払い
年俸制度では、年俸額を分割して毎月1回以上受け取る方法が一般的です。この分割方法には主に「均等割り」と「ボーナス払い」の二つがあります。
均等割り
年俸額を12ヵ月で均等に分割して支給します。この方法では、毎月の受け取り額が安定し、社会保険や税金の支払いも月々に均等になります。
ボーナス払い
年俸額を14分割や16分割など、毎月の基本給とは別に賞与やボーナスとして残りを受け取ります。この場合、ボーナスの支給月には一時的に収入が増える反面、その月の社会保険や税金の支払い額が増えることがあります。
どちらの分割方法も特定のメリットがありますが、社会保険や税金の支払い額については均等割りの方が月々の支払額が安定し、高額な税金がかからない傾向にあります。ただし、将来の年金額に影響を与える社会保険の支払い額も考慮する必要があります。
給与の支払い方法については、企業との交渉次第で希望の方法で受け取ることができる場合もあります。自身のライフスタイルや将来の資金計画に合わせて、最適な受け取り方法を選択することが重要です。
年俸制度と契約後の給与変更
年俸制度は年単位で給与を決定する仕組みであり、雇用契約の際に労使が合意した金額が基本です。このため、契約後には原則として年俸額を変更することは認められていません。また、年俸額に賞与やボーナスが含まれる場合でも、その後の変更は契約上での合意がなければ行えません。
しかしながら、業績不振や成果の程度によって会社側から年俸額の変更を求められることがあります。この場合、労働者側としては法的な保護を求めることがありますが、過去の裁判例からも分かるように、基本的には契約後の年俸額の変更は容認されない傾向にあります。
このような事態に備えて、雇用契約時には契約条件を明確にし、労働者として自身の権利を保護することが重要です。適切な労働条件を確保するために、契約書の内容や労働法の理解を深めることが勧められます。
年俸制度における労働報酬と欠勤・退職時の取り扱い
年俸制度では、通常の労働時間外に発生した残業代の支払いと同様に、欠勤・遅刻・早退に対しても働いていない期間分の賃金が差し引かれることがあります。ただし、会社によっては欠勤控除を行わない場合もあります。
欠勤控除の有無や条件は、会社の就業規則や労働契約書で明確に定められています。労働者としては、就業規則をよく確認し、自身の権利や義務を理解することが重要です。
退職や解雇された場合は、退職日までの労働に対する給与が支払われます。年俸制であっても、退職後の働いていない期間の給与は支給されません。また、年俸額に賞与が含まれている場合、退職や解雇によって賞与の支給が条件付きとなることがありますので、契約内容をしっかりと確認することが必要です。
年俸制での働き方が向いている人
年俸制度は、自身の実力や成果が直接収入に反映される賃金制度です。そのため、次のような人にとって向いている働き方と言えます。
実力を正当に評価してほしい人
自分の能力や成果をきちんと評価され、それに見合った収入を得たいと考える人にとって、年俸制は適しています。成果主義が重視される環境で自己実現したい方におすすめです。
収入の大幅アップを狙いたい人
成果が評価されるため、頑張り次第で収入を大幅に増やすことができるチャンスがあります。特に成長著しい業界やポジションでキャリアを積みたい人にマッチします。
収入額を把握し、計画的にライフプランを組みたい人
年俸制では収入が予測しやすく、安定感があります。そのため、将来のライフプランをしっかりと立てたい人に適しています。家族の生活や将来の投資などを計画的に進めたい方にも向いています。
ただし、年俸制は全ての人に向いているわけではありません。特に定期的な収入が必要な場合や、安定した生活を重視する場合には他の賃金制度の選択肢を検討することが重要です。自身のキャリアゴールや生活スタイルに合った働き方を見つけるために、慎重に選択肢を考えてみてください。